わたしの生きがい
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夜、仕事が終わって帰宅して、玄関のドアを開けると、最近の臭いがきつくない蚊取り線香のほのかな香りと、エアコンの冷気が混ざりあった空気に包まれる。
部屋は暗く、寝静まっていてはいるが、どこか人の気配も感じる。
寝室に行くと、妻の操作するスマホの光が白い点になって、それ以外はぼんやりと黒い塊が3つ横たわっているのが見える。
シャワーを浴びて、自分もそこに寝転がって、4つ目の黒い塊になる。
妻とは何かしら話す。
昨日は何を話したろう。
あまりよく覚えていないが、きっと子供のことだったと思う。
4つの黒い塊。
そう、わたしと妻と、子供たち2人だ。
帰宅したときには、「寝静まって」いたが、寝室で横になると、子供たちの寝息が聞こえる。
寝返りを打つと、衣ずれや、タオルケットがずれる音が聞こえる。
エアコンと扇風機の動く音も聞こえる。
横を見ると、目が慣れてきたのもあって、さっきまで黒い塊だったものが、確かな形となっている。
日中のはしゃぎ回る姿がウソのように、中身のすべてをどこかに預けたようにすやすやと。
でも、確かにそこには熱量がある。
4歳の息子。
顔を近づけてみると、石鹸の混ざったようなやさしいにおいが鼻をくすぐる。
小さく開いた口からは寝息。時に鼻づまりの音。
口の周りのわずかなよだれ。
開いた手は、日中は何をつかんで、握って、投げたんだろう。大きくなったよね、ホント。
腕や脚も一年前とはくらべものにならないくらい。
わたしの脚の筋力が落ちていくのと反比例して、たくましくなっていく。
2歳の娘。
エアコンがついているから十分涼しいはずなのに、だれよりも汗かきで、今も髪が汗にまみれている。
うつ伏せが好きなのか、今日もうつ伏せだ。
横になって寝ると、こんなに大きく感じるのか。
やさしい兄さんの背中を見て、大きく育て。
わたしの心のほとんどはそこにある。
わたしの時間のほとんどは彼らのためにある。
静かなはずなのに、熱量や勢いを確かに感じる。
わたしの命の半分も、そこにあるのかな。
わたしも親になったということだろうか。
不思議だよ。
わたしの生きがいも、そこにあると思えるんだから。